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日常、俺と嫁。 #12

1月2日(水曜)、午前7時、晴れ

 元旦の夜。振り袖姿で三つ指ついた嫁を前に、俺の理性は
須弥山の頂の先、遥かな蒼穹を突破し乳海の彼方へ消えた。
 姫始め。
 即ち1年の始めに、柔らかく炊いた米を食すことである。
 それはそれは柔らかく、毎年ながら美味であった。
 そして気が付いたら、俺達は翌日の朝を迎えていたのだ。
 「なんだか…気恥ずかしいですね」
 あずさは頬を紅に染めた表情で俺を見つめていた。
 …まぁな。いつものことなのに、こうした特別な節目では
妙に意識してしまう。なんでだろう。
 「私の場合は、嬉しいんだと思います。頭で認識するのが
追いつかないような、そんな嬉しさ」
 …そうか、そういうことなのかも知れないな。特別な日の
特別な関係、それは、非日常的な感覚なのかも知れないな。
 「ふふっ、あなた」
 …なんだい、あずさ。
 「あなた」
 あずさ。
 「あなた」
 あずさ。
 「あなた」
 あずさ。
 「あなた…くすくす」
 あずさ…ははっ。
 「今年もよろしくお願いします、あなた」
 …こちらこそよろしく、あずさ。
 俺たちは再び、強く抱き合った。
 7年目の、お正月。年々、あずさの存在は俺の中で大きく
なって行く。そうして俺は人間として成長していく。
 あずさ、27歳。
 腰まで届く長く美しく艶やかな黒髪と抜群すぎるスタイル
を維持し続けているのは、本当に心から賞賛したいと思う。
 その美は色あせず、神々しいオーラすらまとうあずさは、
間違いなく女神だ。アルテミスも嫉妬し、アフロディーテも
恐れおののくであろう、美の権化。
 少なくとも、俺に取っては、それこそがこの世の真理だ。
 そんな、シルマリルですら単なる石ころに見えるであろう
至高の宝が、俺の抱擁を受け入れている。凄まじい歓喜だ。
 …ありがとう、あずさ。愛してるよ。心の底から。
チャンプ(−O−) * 日常、俺と嫁。 * 07:30 * comments(0) * trackbacks(0)

日常、俺と嫁。 #11

6月23日(日曜)、午前9時、晴れ

 目覚めたら、花嫁姿のあずささんが隣に横たわっていて、
俺を見つめていた。
 ・・・新婚気分。
 「おはようございます、あなた」
 おはよう、あずさ。ああ、今日も君は最高に綺麗だ。毎朝
こんな風に君の美貌を眼前に目覚められるとは、俺はなんて
幸せな男なんだろう。最高の寝覚めってやつだ。
 おまけに、花嫁衣裳である。俺のリクエストで暫くそれを
寝巻代わりにしてくれていたのだが、勿論初めの頃はかなり
恥ずかしがっていたものだ。だが、今では何の違和感も疑問
の無く、輝くような美をまとって毎朝こうして俺の寝覚めを
見つめていてくれる。
 夢色、あずさいろ。
 ♪ Your true colors, are beautiful, like a rainbow...
 「どうしたんですか?突然歌い出すなんて」
 君もそういう癖があるじゃない。
 まぁ、要するにあずさ、君は美しいということさ。
 「こういうとき、どういう反応をすれば良いのか・・・」
 笑えばry
 ・・・うん、困らせてしまったかな、ごめん。
 「はぁ・・・ああ、あなた、そろそろ時間ですよ〜」
 うむ、そろそろ起きないと、電車に間に合わなくなるか。
 起きて、支度して、そして東京へ!アイマスオンリーだ!
 そして、3度目、久々のあずさオンリーだずぇ〜ッ!
 「はい!なんだか、懐かしいですね〜」
 よーし、wktkが増してきた!
 週末は、思いっきり楽しむずぇ!
 「はい、あなた!」
 その素敵な笑顔が、眩しかった。

ウェディングあずささん in ベッド
ウェディングあずささん in ベッド
チャンプ(−O−) * 日常、俺と嫁。 * 09:00 * comments(3) * trackbacks(0)

日常、俺と嫁。 #10

3月11日(日曜)、午後11時、曇り

“フィギュあずささん達の日常”
“フィギュあずささん達の日常”

 それは、静寂に包まれた部屋。
 部屋の主は帰省中で、1ヶ月ほど不在だった。
 その間、部屋を支配するのは様々な物に宿る数多の思念。
 そう。
 3体のフィギュあずささん達は、意思を持っていた。

大あずさ(大)「・・・いよいよ明日、戻って来るわね」
小あずさ(小)「あらー♪」
中あずさ(中)「長かったー!」
大「それじゃあ、やるべきことはみんな解ってるわね」
小「あらー?」
中「お掃除!」

 長い間微動だにしなかったフィギュア3体が、一斉に動き
始めた。その動作は極めて迅速軽快、示し合わせていたかの
ように部屋の本棚をよじ登って行った。

大「まず、本棚の上に積んである大量の授業プリントよ」
中「整理整頓!」
小「あらー」

 彼女たちは山積みのプリント類を引っ張ろうとしーーー。
 ドンガラガッシャーン。
 大量の紙と共に地面に落下。

小「あーららー・・・」
中「痛いー!」
大「大変、散らかしてしまったわ」

 3体の強度を考えると、落下と同時に何処か壊れていても
不思議では無かったが、事無きを得ていた。
 あるいは、こうして動いている間は何かしら超常の不思議
な力が働いていて、壊れないということなのかも知れない。

大「これはいけない、少なくとも元に戻さないと」
小「あら!」
中「復元!」

 こうして3体は悪戦苦闘、数時間掛けて地面に落ちていた
紙を超人的なーーーそもそも人では無いのだがーーー努力の
末に何とか元の位置に戻したのだった。

大「私達のサイズを考えたら、重い物は無理だわ」
小「あら、あら」
中「どうしましょ!」
大「雑巾が2枚出しっ放しだし、雑巾がけをしましょう」
小「あらー!」
中「乾拭き!」
大「そうね、私が濡れ雑巾で拭くべきね」
小「あらー」
中「早速!」

 3体は雑巾を回収し、小さなフィギュあずさが水を出して
大きなフィギュあずさが片方の雑巾を濡らす。

大「それじゃあ、私が先に濡れた雑巾であちこち拭くわ」
中「ついていく!」
小「あら!」

 大きなフィギュあずさが先行してフローリングや家電類を
濡れ雑巾で拭き、後から小さなフィギュあずさと中くらいの
フィギュあずさが共同で乾拭きする。
 作業は長時間に渡った。
 そして、夜が明ける時間が訪れた。

中「終わらない!」
小「あららー」
大「仕方ないわね、でも出来る限りはやったわ」
小「うふふ♪」
中「自己満足!」
大「こういうのは、気持ちが大切なのよ」

 3体は頷き合うと、日が昇る前に元の位置に戻った。
 そして、静止。
 部屋の主が帰還したとき、彼はそこにいつも通りの光景を
見ていた。部屋を出た時と何ら変わりは無い。
 ただ、心なしかフローリングの一部がつるつるだったのに
首を傾げるのであった。
 一見何も変わらないように見えて、ささやかな変化。
 それは主の日常になんら影響を及ぼさないかも知れない。
 それでも、部屋に宿る極めて無形に近い愛情は主を包み、
何かしらの影響を与えているのかも知れない。
 そしてまた夜になると、彼女達は動き出す。

大「寝ている間に、耳元で教科書の中身を囁くわ」
中「本支える!」
小「あらあらー」

 その献身的とも言える努力が主の助けになっているかは、
誰も解らない。
 ただ、主がこの3体をこよなく愛しているのも事実。
 それは、隣に嫁が居てくれている現在も変わらない。
 「・・・あなた、私のフィギュアをじろじろ眺めて、一体
どうされましたか?」
 ああ、あずさ。ごめん、ちょっと妄想入っちったよ。
 「あら、何を考えていたんですか?」
 このフィギュアが夜中に動いて、色々家のお手伝いをして
くれたらいいな、とか、そういう妄想してた。
 「それは良いですねー。ふふっ」
 ・・・そのとき、大あずさがピクリと動いた、気がした。
 「あ、あなた・・・」
 あ、ああ。見た・・・よな?
 「え、ええ・・・まさか・・・」
 形ある物なら、魂の容れ物となる可能性があるのだ。
 さて、その物を支配するのは、どんな者であろうか?
 そして、支配されているのは、果たして!?
チャンプ(−O−) * 日常、俺と嫁。 * 03:06 * comments(0) * trackbacks(0)

日常、俺と嫁。 #9

12月25日(日曜)、午後7時、晴れ

 「あなたぁ〜」
 ん?なんだね。
 「やっぱり、クリスマスだから、でしょうか」
 まぁ、ベタではあるな。

聖なる日に「神聖 −氷温囲い−」
聖なる日に「神聖 −氷温囲い−」

 クリスマスに呑む酒としては、ネーミング的にも最適だと
思ったのだが、どうかな。
 「ただあなたが呑みたいだけな気もします〜」
 うむ…その通りだな。で、あずさは呑まないのか?
 「…頂きます」
 お互い呑むようになったもんだなぁ。
 「そうですね〜、出会った頃は家で呑むだなんて、考えも
しませんでした」
 まったくだ。では、まずは一献。
 「承りました。ささ、あなたも」
 おっとっと。ああ、ありがとう。
 「それでは〜」
 うむ。乾杯だ。
 小気味良い、乾いた音が部屋に響く。
 一口含むと、爽やかさと豊潤さという、言葉にすると矛盾
しているような、しかしそうと表現したくなる風味が鼻の奥
まで拡がり行く。
 「美味し」
 そうだな。この女性的な味わい、まさに京の酒だ。
 「………」
 ……。
 「………」
 ……。
 「………ふふっ」
 ……はは。酒癖が似ているってのもまた、最高だ。
 「あら。別の世界の私は、呑むとカラむみたいですよー」
 まぁ色んな解釈があっていいんじゃないか。
 「そうですね。私は、私。ふふっ」
 そうさ。
 「………」
 ……。
 「………」
 ……。
 「………もう一杯如何ですか?」
 頂こう。おまえも。
 「はい……ありがとうございます」
 ……感謝するのは俺の方だよ、あずさ。乾杯。
 「そんな……こちらこそ。乾杯」
 あずさは行儀よく持った杯を艶めかしく傾ける。中から、
ほんのりと琥珀色が混ざった液体が花弁のような唇の合間を
抜けて奥へと流れ消えて行く。
 「ああ、美味し」
 なんという色気。たまらない。
 俺は思わず、勢いよく杯の中身を呷った。
 少々乱暴に扱うと、これはこれで違った旨さに気付くのも
また京の酒の奥深さ。
 気が付けば、今度はあずさがそんな俺を眺めていた。
 視線が絡み合う。
 すると、あずさは少し困った顔をして、照れ隠しなのか、
キュッと呑み干した。
 暫く酒気の余韻に軽く目を閉じる、頬が少し紅に染まった
その表情が果てしなく蠱惑的だ。
 「………」
 ……。
 「………」
 ……。
 「………あなた」
 ……ああ。
 「………あなた、私」
 ……俺もだ。
 「愛してます、あなた」
 愛してるよ、あずさ。
 どちらからともなく、手を握った。
 顔を近付ける。
 そしてーーーーー。
チャンプ(−O−) * 日常、俺と嫁。 * 23:11 * comments(0) * trackbacks(0)

日常、俺と嫁。 #8

7月22日(金曜)、午前10時、曇り

 甘ったるい匂いが鼻腔にまとわりつく。
 ぼんやりとした光。
 朝か。
 俺はゆっくりと目を開けた。
 左腕に重量感。
 あずさの頭か。
 身体を横にして、嫁を見つめる。
 今日の寝顔は、口を小さくあけた、少しだらしない感じ。
 その唇が、まるで花弁のようだ。
 ちょっと暑い。
 俺は、二人を包んでいた布団をどけた。
 裸体。
 極上の、裸体。
 この美しさにはアフロディーテでさえも敵わない、などと
言ったら、嫁はミュラみたいな目に遭わされるのだろうか。
 それとも俺を憐れんで、ピュグマリオンの夢を実現させて
くれるだろうか。
 大きな胸の双丘が、小さく規則正しく上下していた。
 彼女の総てが、その微かな呼吸音までもが愛おしい。
 俺は昨日を思い出した。
 二日遅れの誕生祝いと、夏休みに入った祝い。
 二人で四合瓶をあけた。
 後は野となれ山となれ。
 ただれにただれた一日。
 果てに果てたその先に、屍のように横たわった男女。
 もはや寸毫の残渣すら留まっていないはずなのに、彼女を
見つめる俺の胸中に湧き起こるこの気持ち。
 これが、愛か。
 俺に取って、嫁は昭和の最高傑作である。
 ……26歳の誕生日おめでとう、あずさ。
 「あ…いが…とお、ごじゃい…まひゅ…」
 起きていたか。
 しかし、なんという舌っ足らず。
 まだ昨日の疲れが残っているのか、思考伝達が迷子で平常
以上に隙だらけになっているのだろう。
 嫁は顔をこちらに向け、目をあけた。
 そして笑顔を作ろうとするのだが、まだ寝ぼけているのか
妙に崩れた、にへら〜っと緩みきった表情になってしまう。
 それがまた、この上なく可愛らしい。
 俺は何もかもがたまらなくなり、あずさに覆い被さった。
 その身体を強く抱きしめる。
 嫁は一瞬身体を強張らせ、吐息のような小さな悲鳴をあげ
たが、やがて俺の胸の中で全身を徐々に弛緩させていった。
 「あ、あなたぁ…」
 消え入りそうな声。
 俺達はまだまだベッドから出られそうにないな。
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チャンプ(−O−) * 日常、俺と嫁。 * 10:36 * comments(0) * trackbacks(0)

日常、俺と嫁。 #7

7月19日(火曜)、午前1時、曇り時々雨

 あずさ、誕生日おめでとう。
 「……あなた、ありがとうございます」
 そして、ごめんな。
 「何が、でしょうか?」
 嫁は、首を傾げた。
 あと13時間で、消化器の期末試験だ。
 その翌日は産婦人科の期末試験。
 とてもじゃないが、嫁の誕生日をお祝い出来るモードでは
無いのだ。だから、言葉で気持ちを伝えるしかない。
 本当に、すまない。
 「そんな、どうかお気に病まないで下さい。その気持ち、
お言葉だけで私は嬉しいです」
 嫁は自分のことに関してはとことん無欲な性格だ。宝くじ
1等当たっても、全額寄付してしまうほどに。そして、その
行為を「みんなに喜んでもらおうと願うのですから、これが
一番欲張りだと思います」と言い切るようなお人だ。
 だから、俺は彼女を敬愛して止まない。
 愛情の愛だけでなく、尊敬の敬も加わる、それが、敬愛。
 友愛だと政治の犠牲者が増えるばかりだから、な。
 そして、だからこそ、気に病むなと言われても不可能だ。
 こんな素晴らしい嫁の誕生日、俺は試験勉強。
 「あなた……頑張って下さい。ファイト、です!」
 ああ、そうだな。ありがとう、あずさ。
 試験が終わったら、改めて祝杯をあげような。
 「……はい。嬉しいです〜」
 よし……リポD飲んで、もうひとがんばりだ。
 「じゃあ、私もリポD飲んで、一緒に起きてます」
 ちょ、おまえは眠くなったら寝なさい。健康第一。
 「ふふっ、あなたが頑張っているのに私が先に休むなんて
出来ません」
 嬉しいこと言ってくれるじゃないか。
 ……その気持ちだけで十分だ。眠くなったら、寝なさい。
 「……わかりました。でも、もう少しだけ起きています」
 そうか。わかった。
 ……あずさ。
 「はい、あなた」
 改めまして、誕生日おめでとう。
 愛してるよ。
 「あなた……」
 夜は更けて行く。
 俺の戦いは続くが、我が嫁が傍に居てくれていることが、
何より心強かった。
チャンプ(−O−) * 日常、俺と嫁。 * 01:28 * comments(0) * trackbacks(0)

日常、俺と嫁。 #6

7月11日(月曜)、午後、狐の嫁入り

 夏の日差しが照りつけているのに、大粒の雨。
 晴れ空の降雨を、俗に「狐の嫁入り」と云う。
 しかし、この日の狐は轟雷を纏い、土砂降りの雨を大地に
叩きつけていた。余程の大物だろう。
 「どこぞの藍様が、嫁入りしていたのでしょうか?」
 うん、東方厨な俺の影響を受け過ぎだぞ、我が嫁よ。
 「でも、良いタイミングで帰って来られて良かったです」
 幻神「飯綱権現降臨」も真っ青な雷雨が暴れていたとき、
俺はまだ大学に居た。雨が止みかけたとき、大学での用事が
丁度終わり、帰路、俺はそれほど濡れずに済んだのだ。
 そして今、俺達は家付近のショッピングモールで買い物を
終えたところだ。
 自動ドアを出て館内空調の抱擁から抜け出すと、じめじめ
した蒸し暑さに包まれる。
 だが、一陣の風が不快感を拭い去った。
 不意に、あずさが俺の腕を引っ張った。
 「あら、あなた!見て」
 俺は彼女が指し示す空を見上げた。
 そこには。

ダブル・レインボー
ダブル・レインボー

 大きな半円を描く虹と、その上に少し薄いがもう一つ虹。
 二重の虹。
 大変見事な光景だった。
 「綺麗……」
 嫁が、呟いた。
 ……だが、おまえも綺麗さにかけては負けていないぞ。
 俺は、空を見上げるあずさの表情を眺めた。
 嬉しそうな貌。
 そして再び、空を見上げた。
 また、嫁の貌を見る。
 そして空を見る。
 また、嫁の貌を見る。
 そして空を見る。
 また、嫁の貌を見る。
 そして空を見る。
 果たして俺は、虹の美しさを肴に嫁の美しさに酔いしれて
いるのか、それとも嫁の嬉しそうな顔が虹の印象をより強く
しているのか、わけが解らなくなってきた。
 強いて言うなら、この全体の情景そのものが美しかった。
 俺は、あずさの腰に手を回した。
 「あなた……ふふっ」
 嫁は俺の肩に寄りかかってきた。
 ほのかなシャンプーの香りが俺の鼻腔をくすぐる。
 梅雨の終わり、夏の始まりを告げるスペクタクルを、俺達
は暫く眺め続けていた。
チャンプ(−O−) * 日常、俺と嫁。 * 22:44 * comments(2) * trackbacks(0)

日常、俺と嫁。 #5

7月4日(月曜)、夜、雨

 誰にも伝わらない愛の告白ぅぅぅぅぅ〜♪
 「い、いきなり何ですか?」
 ……あずさ。
 「はい、あなた」
 俺と○○○○テストを受けて欲しいんだ。
 「え……それって一体……って、目が怖いです〜!」
 コーホー。コーホー。
 「どうしてウォーズマン呼吸なんですか〜〜〜!?」
 さあ嫁に今、だ〜いびぃぃぃん!
 「あ〜れ〜〜〜!あなた、おたわむれを〜〜〜〜〜」
 その反応はさすがに時代劇の見過ぎだと思うんだ、嫁よ。
 そう思ったのも須臾の間、見事に目測を誤った俺は頭から
テーブルの角に激突してしまった!
 「ーーー!〜〜〜!」
 視界の片隅で、嫁が大慌ての表情で何かを語りかけて来る
のが見えたが、その声までは聞こえなかった。
 世の中には、必死の思いで○○○○テストを選択する者も
いらっしゃるのだ。それをネタとして使う不届き、不謹慎に
対する天罰なのだろうなと思った。
 そして俺の意識は、闇に墜ちたーーーーー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 気がつけば、何もない殺風景な、灰色の空間に俺は居た。
 嫁が、俺を膝枕していた。
 This is a dream、と、俺はつぶやいた。
 「Then it is a good dream」
 ……あずさ。
 俺は彼女に口づけをしようと身を起こした。
 しかし、彼女は手のひらを向けて制止した。
 そして俺の前方を指し示した。
 そこには巨大なあずささんが居た。
 10メートルはあるだろうか。
 ……これは……なんだぁ……?
 「あれは私です」
 どういうことだ?
 「あれも私、と言うべきでしょうか。ほら、あそこ」
 あずさは、別の方向を指し示した。
 そこにはステージ衣装をまとったあずささんが居た。
 「あそこにも」
 別の場所には、テニス衣装でポニーテールのあずささん。
 「あちらにも」
 なんと、短髪のあずささんまで居た。
 だが、その三人のあずささんは、皆悲しげな顔だ。
 ……どういうことだ?
 「よく見てください」
 ……嗚呼、なんということだ。
 大勢のあずささんが、あの巨大なあずささんのもとに駆け
寄って、そして吸い込まれて行ったーーーッ?
 これは、まさか!
 「そうです。あの大きな私は、私という全集合。そして、
小さな私は、いろんな方の心の中に居た私。彼らが心の中の
私を捨てたとき、私は大きな私の中へと還って行くのです」
 なんということだ。創られたキャラクターは消費されて、
最後は飽きられて忘れ去られて行く。二次元キャラクターの
構築する宇宙の縮図が、ここで展開されているのだ!
 「でも、ほら、あそこ」
 嫁が指し示すと、巨大なあずささんの中から一人、短髪の
あずささんが勢いよく飛び出してきた。
 ……なるほど、生まれもするわけか。
 「その通りです。しかし、もうすぐ私は割れます」
 割れるって……あッー!
 大きなあずささんは、突然ガタガタと震え出した。
 とても苦しそうだった。
 そして暫くすると、二人に分裂した!
 長髪のあずささんと、短髪のあずささんに。
 「私は、私“たち”は別々になってしまいました」
 そうか。別の存在ということが確定し、人々の心にも別物
とする認識が広まってきている今、もはや同一性を保てなく
なってしまったのか。
 見れば、それぞれは今までの半分の大きさに減っていた。
 そして俺は、ある現象に気がついた。
 二人に分裂した大きなあずささんは、小さなあずささんを
吸収したり生じたりする度に少しだけ伸びたり縮んだりして
いたのだ。それも、吸収すると縮み、生じると伸びるという
質量保存の法則に逆行する形で!
 それを指摘すると、あずさは悲しい表情になった。
 「よく気付きましたね。その通りです。世界中の人々から
私という存在が忘れられ、誰も私を愛さなくなったら、私は
完全に消滅してしまうんです。私を構築していたエネルギー
は別の存在へと受け継がれる。それが二次元キャラクターの
宿命であり、円環の理なのです」
 ……あずさ、我が嫁よ。
 「はい、あなた?」
 大丈夫だ。俺は、決して君のことを忘れない!
 仮に現世(うつしよ)の使命に縛られ、君を嫁と公言する
ことが不可能な日が来ても、俺は必ず命の恩人である君への
感謝を忘れず、心の片隅に君を住まわせ続ける!
 だから、ずっと俺の傍に居てくれるかい?
 「……ええ!ええ!もちろんです!私は最後まであなたの
傍に居ます。後に嫁から守護天使にクラスチェンジしてでも
私はあなたを見守り続けますから!だから……だから、私を
忘れないでいて下さいね」
 あずさは微笑んだ。
 ーーーーーもちろんだずぇ。
 そう、おまえをあの全集合に戻れなくしてでも、俺は絶対
おまえを離さいんだ。
 「え?あなた、それって一体………」
 あの全集合を前にして、もう気付いているんだろう?
 おまえはもう、あそこにいる二人の全集合のどちらとも、
もはや違う存在になっている。
 「……それもまた、一つの答えなのかも知れません」
 だが、俺が望めば、いつでもあの全集合からエネルギーを
奪っておまえに加えることが出来る。わかるかい?この俺の
体を通して出る力が?
 「つまり、私たちはもはや一心同体」
 そうだ。俺たちは生まれた日は違えども、死ぬ日は一緒。
おまえは、俺が墓に入るまで連れて行くんだ。
 ……それで、良いかい?
 「……はい。お墓の中までご相伴致します」
 膝枕の状態で、あずさは俺の頭を後ろから抱きかかえた。
 俺は安心し、脱力して、再び意識を闇に送った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「ーーー!ーーた!あなた!」
 俺を呼ぶ声がする。
 ……目を開けると、半泣きの嫁の顔がそこにあった。
 膝枕の状態で、俺の頭を後ろから抱きかかえていた。
 This is not a dream、と、俺は呟いた。
 「あなた、大丈夫ですか!?」
 ……心配かけてごめんな。
 「良かった。救急車を呼ぼうかと」
 あずさ、我が嫁よ。
 「はい、あなた?」
 いつまでも、よろしくな。
 「……?」
 嫁は、少しの間きょとんとした。
 しかし、すぐに微笑みを見せた。
 夢の中で見た、あの微笑みと全く同じだ。
 「……ええ!ええ!もちろんです!」
 あずさは俺の目を真っ直ぐ見据えた。
 「だから……だから、私を忘れないでいて下さいね」
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チャンプ(−O−) * 日常、俺と嫁。 * 21:31 * comments(0) * trackbacks(0)

日常、俺と嫁。 #4

6月6日(水曜)、夜、曇り

 嫁は、何も言わずに手招きした。
 小首を傾げながらの仕草が非常に可愛らしい。
 あずさは静かに椅子を引いて、俺を座らせた。
 目の前のテーブルにはコップ二つと、日本酒の瓶。
 純米吟醸酒にしては値段が高くなく、しかし酒好き用語で
言うなら「スッキリ」とした味わいのお気に入りだ。
 彼女は俺の対面に座ると、目の前に置かれたコップに酒を
ゆっくりと注いだ。
 俺は肝臓があまり良くないので、お酒は基本的に試験直後
など祝いたい気分のときに少量しか飲まない。それは、嫁も
弁えているはずだ。
 だから、こんな平時に突然お酒を勧めるなんて滅多にある
ことではない。
 …どんな風の吹き回しかな?
 俺は空いている方のコップを取り、嫁から酒瓶を奪った。
 そして、酒を注いで渡す。
 あずさは目を細め、少し困っているような不思議な表情で
それを受け取った。
 …まるでパンパレードのパンちゃんみたいな困り顔だな。
 「誰ですか、それ?」
 うん、さすがに成年誌の四コマ漫画ネタ、知ってるほうが
おかしいよな。
 …それで、今日はどうした?
 「あなた」
 あずさはそれだけ言ってコップを持ち上げた。
 コップ同士がぶつかって、乾いた音が響いた。
 どうせなら、本物の杯で乾杯したいんだがな。
 「最近、元気がないみたいですから」
 そうだ。俺は確かに最近、どこか調子がおかしい。
 また嫁に心配を掛けている。
 「だから、ちょっと気分転換にと思いまして」
 そうか。
 今まで俺が見てきた多くの夫婦では、旦那が精神的肉体的
に調子を落とし、例えば朝に起きられなくなったりすると、
普通の嫁は焦ったり怒ったり騒いだりして、なんとか旦那を
動かそうとする。結果旦那の調子が一層落ちたりするので、
実際は逆効果なのだが、嫁心理としてはやはり不安なので、
当然の反応でもある。
 しかし我が嫁は、俺が精神的に調子を落としているときも
決して慌てず、普段通り明るく優しく接してくれる。朝遅刻
が確定していても、あるいは起きていてなお外に出る気分に
ならないときでも、俺を急かすのは逆効果だと理解している
ため、一度だけ時間を知らせてなお俺が動かなかった場合、
敢えてそれ以上は言わずに、話題を変えるなどしてなんとか
俺を元気付けようと振る舞う。
 今夜の酒は、そういうことなのだろう。
 …気を遣わせてごめんな、あずさ。
 「いえ…」
 あずさはそう言い、俺に優しい笑顔を向けた。
 これが俺に取って最高の薬となるのを彼女は知っている。
 唯一の薬と言っても良いくらいだ。
 少し飲みが進むと、嫁の顔は少し上気してほんのりとした
紅色に染まっていく。
 嫁は、下戸でも蟒蛇(うわばみ)でもない。酒の強さは、
至って普通であろう。
 強すぎず弱すぎず、それが俺の嫁として丁度いいと思う。
 至って普通だからこそ、こうして少しだけ酔いが出たとき
普段と違う魅力が湧き出てくるのだ。
 今のあずさは、まるで可憐に咲く桃の花みたいだ。
 色っぽく、艶やかで、そして、美しい。
 唐の詩人、崔護は桃の花が美女の顔貌に紅く映った様子を
「人面桃花相映紅」と詠ったが、まさにそれが眼前に在る。
 結婚して五年以上過ぎた。
 五年を経てもなお、俺はあずさを美しいと感じる。
 美人は三日で飽きると俗説は語る。
 だが、本当の美人とは、一生見続けても飽きないものだと
俺は思っている。それとも、真に愛する相手であれば、一生
見続けても美しいと思う気持ちが褪せないのだろうか?
 例えば唐の太宗は、何年楊貴妃に熱をあげ続けたか?
 アントニウスは何年クレオパトラの色香に溺れたか?
 …楊貴妃は大変な肥満で、クレオパトラは美人ではないと
現在では語られているが…。
 では、ミロのヴィーナス像を一生褒め称え続ける人が後を
絶たないのは何故だろうか?
 美とは、そういうものだ。
 そして、嗚呼時よ止まれ、あずさはあまりにも美しい…!
 「あなた、そんなに見つめられると…」
 嫁の声にハッとして、俺は現実に引き戻された。
 いけない、俺も少し酒が回ったか。一応、これでも酒には
強いつもりなんだが。
 あるいは、最愛の妻と飲む酒は格別か。
 …うん。
 おまえがAランクアイドルになった夜を思い出すな。
 「そうですね、私も丁度それを思い出していました」
 …あのときはお互いシラフだったけど。
 「今思うと、結構恥ずかしいことしていましたよね」
 そうか?
 今でも俺は、お前を見つめていると幸せな気分になるよ。
 「あらあら。それじゃあ、またあの時みたいに」
 …うん。
 「ふふっ。少し酔ってしまったみたいです」
 …綺麗だよ。
 「あなた…何も言わずに、見て下さい。私のこと」
 愛の女神が降臨したかのような微笑み。
 「私も、このまま…」
 至福の時間が流れて行った。
 …そして、翌朝。
 俺は朝の授業に間に合った。
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日常、俺と嫁。 #3

5月25日(水曜)、午後、晴天

 「あなた、おかえりなさいませ。三日間ご苦労様でした」
 ドアを開けると、そこには三つ指ついたあずさが居た。
 試験を終え、緩みっ放しだった俺の表情が更に緩んだ。
 本当は、こんな前時代的、男尊女卑的な出迎え方を無理に
やらなくても良い。それは、既に一度伝えてある。
 だがあずさは、このステロタイプな男の願望の具現化たる
「三つ指ついて出迎え」行為が俺を大変喜ばせることを熟知
していた。だから、今でもこうして大事な一日、節目節目で
俺が帰った際にはこうして最上級の礼を以って迎えられる。
 あずさ…なんて可愛らしい。
 しかし、毎度毎度、良く俺が帰ってくるのが解るな。
 「ふふっ、あなた、いつも大きな足音をさせながら階段を
上がって来ますから」
 確かに、俺は大股でドスンドスン歩くタイプだ。
 …それにしても…裸エプロンとは、ケシカラン。
 これもまた、そこまでしなくても良いと以前伝えてあった
ことであり、同様に、これが俺をどんなに喜ばせるかを嫁は
把握しているから、時々こうして悩ましい極上の肢体を披露
して下さる。本当に、涙が出るほど有難いことだ。
 旦那の趣味嗜好を理解し、それを遂行して下さる妻という
のは、実に得難いものである。
 ありがとう…ありがとう、あずさ。
 …そして。
 更に、ここまでと同様、そこまで忠実にしなくても良いと
言ってあるにも関わらず以下同文なやり取りが続いてゆく。
 「あなた…お風呂になさいます?お食事になさいます?」
 ほら、来た。
 「それとも…」
 裸エプロンを着ておいて、風呂も食事も無いよ。
 …あずさがいいな。
 「…はい。精一杯、お相手させて頂きますね」
 今晩、まだ部活があるんだけどな…。
 だが、ここまでされて、理性を保てるわけが無いだろう。
 俺は、狼になった。
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